あ、あ、あ愛してる
学長はすぐさま、高等部音楽科ヴァイオリン主任を呼び出し、ヴァイオリン主任の御墨付き推薦で、俺の意志にはお構いなしに、白羽の矢を立てられ、今から行ってくると素早くメモで伝えた。

俺は元々吃音でまともに喋ることができないし、声帯の手術後もまだ上手く声を出すこともできない。

「Alice、英語の筆記は大丈夫?」

花音は心配そうに俺の顔を覗き込んだ。

『大丈夫。俺、TOEIC900点だから』

俺は手話で自慢気に言い『弾いてくる』と、ヴァイオリンケースに着けたウサギのストラップを2つ、花音に見せた。

『お守りもあるし』

手話で伝えると、花音は「行ってらっしゃい」と優しく笑った。

俺が学長と共に横浜コンサートの会場パシフィコに着くと、受付でティールームに案内された。

アメリカ大使館広報・文化交流部担当オフィサー、デュオの姉、マネジャー、コンサートスタッフが顔を揃えていた。

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