あ、あ、あ愛してる
プログラムが超絶技巧曲の品評会だ。

ラストにエルンスト作曲「庭の千草変奏曲」で締めている。

勘弁してくれよと言いたくなる。

ヴァイオリ二ストの弟、トニーは相当な自信家で超絶技巧演奏家に違いないと思った。

エマのピアノ演奏に、必死で食らいついた。

自信家の弟、トニーの鼻をあかしてやりたいと思った。

1時間半ぶっつけで音合わせをし、ラストの「庭の千草変奏曲」を残し、俺はふーうと溜め息をついた。

「Kazune, you really are amazing. I can not believe people can play up here in the first look.」

エマが甲高い声で「初見で弾ける人はいないと思っていた」と感想を述べたが、俺は張りつめて弾いていた疲労感で上の空だった。

客席の最前列。

足を組み、座席にふんぞり返っていたマネジャーが、高らかに拍手を送りながら舞台に上がってきた。

「Great, but more than Tony.」

< 173 / 209 >

この作品をシェア

pagetop