あ、あ、あ愛してる
「トニーの代役が勤まるヴァイオリ二ストが、日本にいるのか」という内容の書き込みが、幾つもある。

トニーのブログの一言「俺に敵うヤツなんていねえよ」にムカついた。

言わせたままにしておくものかと思った。

俺の向かいには姉エマが座り、優雅に紅茶を飲みながら、楽譜を読み返している。

俺は机をコンコンと叩き、エマに「トニーは音合わせの俺の演奏を聴いたんですか」と書いたメモ用紙を見せる。

「音合わせの様子はパソコンで、リアルタイムで聴いているはずよ。今頃は真っ青になってヴァイオリンを弾いているかもしれない」

エマは笑いながら言う。

「和音、心配いらないわ。あなたなら誰も不満を言わない。あなたの『庭の千草変奏曲』は完璧だったし、トニーの演奏より胸が熱くなった」

エマは胸に両手を当て、うっとりした顔で俺を見た。


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