あ、あ、あ愛してる
恋しちゃったかも……
目を覚ますとベッドの上だった。

ボンヤリしている頭に、スローテンポの歌が聞こえた。

透き通る歌声が火照って怠い体を癒すように、優しく耳に響いた。

ベースギターには似合わない曲――だけど、その歌声は、すごく思いがこもっていると思った。


「気がついた? 『LIBERTE』のメンバーが抱えてきたのよ。熱中症」


「あ――」


「着ぐるみを着たままでなんて、ムチャをしすぎだわ」

あたしは女医の言葉など聞いていなかった。

窓越しに見えるイベント広場から目が離せなかった。

ステージ上、たった1人で歌う綿貫和音の歌声と姿が気になってしかたなかった。


「先生、ありがとう。小言はごめんなさい。まだバイト時間なの」

ベッドを降り、慌てて室を出る。


「気づいたか、往生したんだぜ」

拓斗があたしを見下ろし、意地悪な口調で言う。


「ねえ。彼、どうして1人で歌ってるの? 1人で大丈夫?」
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