あ、あ、あ愛してる
「だと思うけど。この弟は有栖川の本当のスゴさを知らない」

あたしと愛美は副部長の顔をマジマジと見つめた。

「合唱コンクールの時も本番の演奏の方が断然、冴えて華があった。有栖川は本番に強い。いや寧ろ、本番の方がいい。コンサートもきっと、この演奏よりスゴい演奏をするね」

「こ、ここの『庭の千草』よりスゴい演奏をすると言うんですか!?」

愛美は興奮気味に言い、顔をスリ寄せるようにしてスマホから聞こえる演奏に耳を澄ませた。

「全米で爆発的人気の、ジュリアード音楽院卒業生デュオだかなんだか知らないけど、有栖川が彼らに劣るはずがない」

あたしと愛美は仁科副部長のスゴい確信に満ちた顔と言葉に、圧倒され唖然として、言葉も声も出なかった。

仁科副部長は和音くんが本番で、どんな演奏をするのかを熱く語ったけれど、実際の演奏を聞いてみたいと思った。


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