あ、あ、あ愛してる
サラサーテ「序奏とタランテラ」、クライスラー作曲「レシタティーボとスケルツォ」、バッハの「無伴奏ソナタとパルティータ」を続けて演奏する。

さらに続けて、難曲の代名詞パガニーニ作曲 「ラ・カンパネッラ」。

俺は高校生だとかLIBERTEのボーカルだとか、俺の演奏を色眼鏡で聴いている観客を「あっ」と言わせたかった。

トニーの代役という枷を忘れたくて、懸命にエマのピアノ演奏に、有栖川和音の本気の演奏をぶつけた。

ラ・カンパネッラ演奏で1部が終了し、休憩を10分挟む。

カラカラに渇いた喉を潤し、超絶技巧の連続でキシキシになり、突っ張りそうな指をほぐし温めた。

「和音、あなた音合わせは手を抜いていたわね」

――はぁ? 音合わせの時は初見だった。エマこそ、本気で弾いていなかった

「値踏みをしていたのよ、あなたがどれほどの実力なのか」

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