あ、あ、あ愛してる
エマのネタばらしの後、プログラム通りにヴァイオリンソロで、「イザイ『無伴奏ヴァイオリンソナタ 第3番「バラード」』ニ短調」を演奏した。

ゆるやかなテンポで始まり、即興的なフレーズと共に、ヴァイオリンの機能を知り尽くした技巧的な効果も駆使された多彩な表現で、幻想的に情熱的に歌い上げる曲は、ヴァイオリン奏者の実力を示すには充分過ぎる曲だ。

「失敗すると、何だたいしたことないじゃないか」と言われるのは間違いない。

俺はガムシャラに、真剣に弾いた。

続けて、エマとパガニーニ「『わが心うつろになりて』による序奏と変奏曲」、次にヴィニアフスキ「モスクワの思い出」と、超絶技巧のオンパレード曲を演奏し、エマが再び話し始める。

「和音のヴァイオリンの音色は、音合わせの時と全然違うわ。1部終了後の休憩で、彼に話したら何て言ったと思う?」
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