あ、あ、あ愛してる
どうして今、そんなことを言うの?あたしは自分の気もちを閉じ込めようとしているのに、嬉しいのに辛い。

好きな人と観覧車に乗る夢が叶ったのに、何故こんなに辛いんだろうと思う。

あたしだって、初めて会ったあの日から和音くんが好きだったと、叫びたい気持ちをグッと抑えた。

「か、かか花音」

和音くんが掠れて出ない声を絞り出し、あたしの肩をギュッと抱きしめた。

和音くんの胸からヒューヒューと風の音が聞こえる。

和音くんの手も体も火照っていて、とても暖かかった。

「かかか花音……あ、あーあAliceってよ呼んでくれて、あーあありがとう」

嗄れた弱々しい声が耳元で聞こえて、涙がこぼれ落ちそうになる。

泣いちゃだめだ――あたしは歯を食いしばり、泣くのを堪えた。

和音くんの肩越しに横浜の街が見えた。

夕闇に色とりどりの灯りが、星みたいに見えた。

「―――Alice、大好き」

あたしは言えない言葉を飲み込んだ。
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