あ、あ、あ愛してる
俺は仁科を急かし、練習室の鍵を開けてもらうと、まっすぐ練習室の黒板に向かった。

「有栖川!?」

チョークを握りしめ、黒板の前で立ち竦んだ俺に仁科の視線が突き刺さる。


――花音、返信がないから伝言することにした。

俺、音信不通のまま留学したくないから。君はコンプレックスの塊だった俺に希望をくれた。

俺の心を救ってくれた人だから。感謝の気持ちをたくさん伝えたいのに、うまく話せなくて、声も出せなくなって……ゴメン。

もう1度歌いたいから、喉を治して君のために歌いたいから、ニューヨークに行ってくる。

花音、俺は君の前ではLIBERTEの和音でなく、有栖川和音でいたい。


俺は暫く考え、一気に書き終えた。

「有栖川、恥ずかしくない? これ、ラブレターだよね」

――恥ずかしいなんて言ってられない

「不器用だな~」

仁科は笑いを堪えながら、俺の顔をしげしげと見つめた。
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