あ、あ、あ愛してる
奏汰がステージに上がり、和音くんの肩を叩き、客席に向かって呼び掛ける。


「中断しちまって、すまない。病人やケガ人はほっとけないからな」

場が一変した。

しっとりした空気が活気に変わる。

和音くんが頭を上げ、ニコリ笑った。


「和音ーっ」

歓声が幾重にも響く。

あたしは着ぐるみを着て、外に出た。

和音くんに向かって、思い切り手を振る。


――花音

和音くんの呼ぶ声が聞こえた気がし、胸がキュンとした。

和音くんがステージを移動するたび、淡い茶色の軟らかそうな髪がフワリと揺れる。

あたしは正直、昨日まで「LIBERTE」をあまり知らなかった。

ボーカルがやたら美形で人気があり、無口で喋らないということくらい。

数日前、友人に「遊園地で着ぐるみのバイトをする」と言うと、「LIBERTE」が今日ライブをする事を教えてくれた。

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