あ、あ、あ愛してる
授業で指名されるたび、喋ることを迫られるたび、パニクる俺。
「有栖川くん、訳して」
「だ・か・ら―――先生、有栖川は喋れません」
古典の女教師に限らず、授業中に指名される確率が高いのは、「有栖川和音」が出席簿の最初にあるからだと思う。
俺はスッと立ち上がり、黒板に向かう。
手振りで「書いていいですか?」と訊ねるが、「はあ?」と聞き返される。
チョークを手に取り、黒板に女教師が読んだ範囲を高速で書きまくる、注釈付きで。
「さすが有栖川、万年首席。何で特進コースに行かねーのか、疑問」
「欠席や早退、遅刻が多いのに何で」
そう、俺は入学以来ずっと首席を貫いている。
父が俺に課したバンドを続ける条件。
在学中は如何なることがあっても首席であり続けること、高校在学中は学長、学園理事会の1部役員、保健室の女医以外に「LIBERTEのボーカル綿貫和音」だとバレないこと、大学まで進学し中退を認めない、必ず卒業すること。
「有栖川くん、訳して」
「だ・か・ら―――先生、有栖川は喋れません」
古典の女教師に限らず、授業中に指名される確率が高いのは、「有栖川和音」が出席簿の最初にあるからだと思う。
俺はスッと立ち上がり、黒板に向かう。
手振りで「書いていいですか?」と訊ねるが、「はあ?」と聞き返される。
チョークを手に取り、黒板に女教師が読んだ範囲を高速で書きまくる、注釈付きで。
「さすが有栖川、万年首席。何で特進コースに行かねーのか、疑問」
「欠席や早退、遅刻が多いのに何で」
そう、俺は入学以来ずっと首席を貫いている。
父が俺に課したバンドを続ける条件。
在学中は如何なることがあっても首席であり続けること、高校在学中は学長、学園理事会の1部役員、保健室の女医以外に「LIBERTEのボーカル綿貫和音」だとバレないこと、大学まで進学し中退を認めない、必ず卒業すること。