あ、あ、あ愛してる
女教師が俺の板書に見惚れ深い溜め息をつき、授業終了のチャイムが鳴った。

仏頂面で教室を出て行く女教師が気の毒だと思いつつ、ノートを仕舞おうとする。


「有栖川くん、今の時間の板書写させて」

俺は言われてノートを差し出す。


「有栖川。進路調査提出どうする? 親父の会社、有栖川グループ継ぐんだろ。お前が特進コースに変わるって噂があるぜ」


俺はメモ用紙を取り出し、ペンを走らせる。


――会社は兄が継ぐから。俺は内部受験で大学の音楽学部に行く


「有栖川グループ継がないんだ」


――まともに喋れないのに会社のトップなんてできないから


「あ……だよな。それに遅刻、早退、欠席が多いのって体弱いからなんだろ」

度々、パニックで過呼吸を起こす俺は、どうやら病弱だと思われているらしい。
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