あ、あ、あ愛してる

街頭演奏を始めたのは、中学２年生の春。

３ヶ月、書き溜めた歌を歌いまくって、拓斗と奏汰に声を掛けられ「LIBERTE」はできた。

ガラガラのステージやカビ臭いオンボロステージ、バンドの前座や繋ぎで歌った。

手作りのステージチケットやＣＤを何枚も買い配ってくれたファンもいる。

インディーズで1年半、ひたすら歌った。

何度も何処へでも足繁く通って聴いてくれるファンの真心は、有り難いという言葉では言い尽くせない。

音楽プロデューサーの目にとまり、デビューして２年。

俺の父親が政財界に幅を利かせる有栖川グループの会長で、俺こと「LIBERTEの綿貫和音」が、その末弟だと知る者も、俺がまともに喋れないことを知る者も、限られた人しかいない。

「有栖川くん、ノートありがと」

――どういたしまして