あ、あ、あ愛してる
目覚めると保健室のベッドの上だった。


「気がついた? 今日はいつもより発作が大きかったわね。クリニック、ちゃんと通っているの?」


「し、し、し診察、き―――のうだ……った……」


「話さなくていいわ、深呼吸しなさい」

俺はゆっくり深呼吸する。


「2時間寝ていたわよ」


「!?……」


「仕事、間に合う?」

俺はスマホで時間を確認し慌ててベッドを降り、手話で「ありがとうございました」と伝える。

保健室の女医、彼女は俺が綿貫和音だと知る数少ない面子の内の1人。

体調不良や通院を装い、遅刻早退、欠課の許可を出しバンド活動に行く手助けをしてくれている。

俺は急いで保健室を出て教室に戻る。

6時限目授業中、ふらり教室に入った俺に教師とクラスメイトの視線が痛い。

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