あ、あ、あ愛してる
部長が半泣きになり、他の部員も動揺し半泣きになる。

「和音くん……Aliceが」

あたしは和音くんが「明日はライブのリハーサルで朝からアリーナにいる」と言っていたのを思い出した。

「先生、有栖川先輩がコンクールを聴きに来ると言ってました」

「有栖川? 音楽科の有栖川和音、ダサAlice!?」

あたしの言葉に食いついたように、仁科副部長が身を乗り出す。

「有栖川くんはヴァイオリン専攻でしょう!?初見でピアノ伴奏ができるのかしら?」

顧問の顔が曇り、あたしを見下ろす。

「小日向、有栖川に連絡が取れる?」

仁科副部長が顧問を無視して声を張り上げる。


「はい、やってみます」

あたしはスマホを取り出し和音くんにメールした。

「お願い」と、祈りをこめて。

――花音、事情はわかった。15分したらロビーに降りる
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