あ、あ、あ愛してる
何の感情も感じられない返信メールだった。

絵文字も感嘆符も何もない。

落ち着きを失い、焦りと不安でいっぱいになったあたしの心に、短い文が冷静になれと言っているように思えた。

あたしは和音くんに「わかった、ありがとう」と返信し、仁科副部長に「15分したらロビーに来れるそうです」と伝える。

「15分……練習しよう。黙って待っていると不安になる」

仁科副部長は部員を見回し、ロビーの外に出た。

雨上がりの湿った空気が体を包む。

あたしたちは急いでパートごとに整列し、部長の指揮に合わせ不安を抱えたまま、歌った。

伴奏がないと、こんなにも纏まらないのかと思う。

バラバラなハーモニーは不安を更に広げていく。

――和音くん、助けて

あたしは心の中で和音くんの名前を呼び続けた。

15分はとても長く感じられた。

「か、か、か花音」


< 50 / 209 >

この作品をシェア

pagetop