あ、あ、あ愛してる
――喋れないのに迷子のお母さん捜しするような、優しい男子もいるんだな

あたしは声を張り上げながら思う。

胸がキュンとする。


「あっ! ママーっ」

総合案内所の数メートル前、女の子が叫んだ。


「ママーっ! さやちゃん、ここーっ」


「さや」

慌てて走ってくる女性の姿を確認し、男子はしゃがんで、さやちゃんを肩車から下ろす。


「ママーっ」

一目散にママ目掛けて走っていく。


「さや、捜したのよ」


「きれーなおにいさんとね、ウサギさんがさがしてくれたの」

女の子のママは、こちらを見て深々と礼をした。

何度も頭を下げた。


「おにーさん、ウサギさん、ありがとう」

女の子は小さな手をブンブン振った。


「ねえ、あれ、あの人、綿貫和音じゃない!?」

一機に注目を浴び、人だかりに囲まれ揉みくちゃにされると観念した……。

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