あ、あ、あ愛してる
お咎めの代わりに
ヤバいと思った瞬間、意識がとんだ。

気づくと病院のベッドの上、ご丁寧に呼吸器と酸素マスクまで装着されていた。

身体の節々が痛み息苦しく、怠くてたまらなかった。

夕方、拓斗と奏汰が憔悴しきった様子で病室に入ってきた。


「具合どうだ?」

奏汰が俺の額に手を当て、深い息を吐く。


「リハは何とか終わらせたけど、お前が気絶した後、修羅場だったぜ。ロビーの学生が騒然とするは、ホールスタッフは出てくるは、救急車を呼ぶは」

拓斗が奏汰の肩に手を置き「おい」と、険しい顔で言う。


「和音、聖奏学園は県大会出場が決まったそうだ」

拓斗は朗報を伝えながら、浮かない顔をする。

ホールロビーで「ダサAliceが綿貫和音!?」と叫ばれた後の記憶が、全くない。


「ゆっくり休め」

俺は「ごめん」と手話で伝える。


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