あ、あ、あ愛してる
部長がキレ気味に、口を尖らせる。

部長がたしか音楽科指揮専攻だったの思い出す。


「尾崎さん、相手が貴方だから引き下がったのよ」

顧問が付け加える。

――期待に沿えるかどうかわかりませんが最善は尽くします

本来のピアノ伴奏者には気の毒だと思ったが、そう答えるしかなかった。

学長は俺のメモを見て頷き「頑張ってくれたまえ」と、勝利するのが当たり前のように言った。

俺と部長は学長室を出て音楽科棟へ向かう。


「あなたがLIBERTEのボーカル『綿貫和音』だなんて、まだ信じられないわ。喘息、酷いのね。身体、大丈夫なの?」

部長は次から次に、一方的に話す。


「あなた、手話できるんでしょ 。わたし、日常会話くらいなら解るわよ」


『そう、助かるよ。筆談、結構たいへんなんだ。七夕のアリーナライブまでは練習に付き合えない。伴奏の録音CD、明日には用意するから』






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