あ、あ、あ愛してる
部長が甲高い声を上げ、俺を頭から爪先までなでるように目を泳がせる。


『好き好んで、ダサい学生でいるわけないだろ。バレないようにが、学校側との条件だった。処分の代わりに県大会のピアノ伴奏は関東大会進出が前提、薄皮1枚でクビが繋がってるってことだろ』


「あ――――」

部長は唖然とし、足を止める。


『容赦しないからな』

部長の顔が引きつった。

部長と分かれ教室に入ると、クラスメイトにいきなり取り囲まれた。


「水臭いぞ、有栖川。何で隠してたんだ?」

揉みくちゃにされながらの質問攻め。

LIBERTEの綿貫和音のこと、デビューのきっかけ、拓斗と奏汰との出会い、処分はどうなったかなど、俺は口答で何1つまともに答えられなかった。


「LIBERTEの和音、どうりで喋らないはずだわ、喋らないんじゃなくて喋れないんだもん。ねえ、有栖川」
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