あ、あ、あ愛してる
コーラス部の副部長仁科がガッカリした顔で、俺を見る。


冷や汗がじわりと滲み呼吸が乱れ始め、パニックを起こしかけた俺を救ったのは、仁科の一言だった。


「有栖川、ねえ『ROSE』歌って」

サッと箒を差し出す。

俺は箒の柄を掴み、握り締めた。

歓声と野次とライブの熱狂的なファン並みの絶叫で、教室内が活気づく。

俺はクラスメイトを掻き分け、教卓の上に飛び乗った。

歓声が更に激しくなる中、箒をベースギターに見立て、鳴らす素振りをする。

悲鳴に似た女子の歓声を受け、俺は歌い始めた。


♪Some say love it is a river.

That drowns the tender reed.

Some say love it is a razor.

That leaves your soul to bleed……

余所のクラスの学生が廊下に溢れ、窓を開け身を乗り出し、教卓の上で歌う俺を観ながら声を張り上げている。
< 69 / 209 >

この作品をシェア

pagetop