あ、あ、あ愛してる
いきなり腕を捕まれ、猛ダッシュ。


「ちょっと、……綿貫和音って、えーーっ!? 本物!!」

ドキドキが止まらない。



――イベント広場で綿貫和音がコンサートする日。今日だったんだ

走りながら思い出した。

遊園地の事務所まで、手を引かれ猛ダッシュ。

ヘタヘタと崩れるように座りこんで、着ぐるみの頭を脱ぐ。


「勘弁……してよ……いきなり猛……ダッシュなんて」

息切れしながら訴える。


男子は左手を胸の前に、右手を左手の上に置き下から上に、ゆっくり動かし頭を下げる。

あたしは首を傾げ、今のは確か「ごめんなさい」の手話だったかなと思った。

「和音? お前、何処行ってたんだよ。ライブ前に居なくなって戻らないし」


――ごめん、迷子の親捜ししてた。ウサギと

話しかけた男性は、手の動きを読み取り声に出す。

「あんた、誰?」



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