あ、あ、あ愛してる
女子の熱い声援と男子の野太い呼びかけを浴び「ROSE」を歌い切る。

教卓を飛び降りると、竹刀を握りしめた生活指導部歴史教師が憮然とした顔で教室に入ってきた。


「有栖川、まさかお前がな」

首を捻りながらフッと笑う。


「席に着け。授業始めるぞ」

何事もなかったように教壇に上がった。

その静けさが却って無気味で、誰もが無言のまま慌てて席に着いた。

最前列の俺の席。

俺は教卓についた足跡が気になり、机脇に掛けた鞄からハンドタオルを取り出し、急いで教卓を拭いた。

6時限目の授業終了のベル、起立礼の号令とほぼ同時に俺は教室を出る。

廊下、階段を走り下足室から校門を観る。

カメラを抱えた者、マイクを持って待ち構えている者、報道陣が群がっている。


「おい、有栖川。裏門へ回れ、誰もいないぜ」
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