あ、あ、あ愛してる
数名の男性に囲まれ見下ろされ、怪しい人みたいに言われている。


「あのね~、綿貫和音だか何だか知らないけど、迷子のママ捜しはお礼を言うわ」

男子はふるふると首を振り、笑顔を向けている。


「でも、いきなり猛ダッシュって何なの。着ぐるみ着て猛ダッシュって……」


男子は再び左手の甲から、右手を下から上に動かした。


「ごめんだってよ。和音が人捜し、有り得ねぇ。まともに喋れもしないのに」


「ひっどい!! すっごく親身になってママ捜ししてくれたんだから」


「和音、喋れないのがバレたらどうするんだ。お前は歌作って歌だけ歌ってりゃいいんだよ。喋りは俺らがやるんだから」

綿貫和音は黙って俯いている。


「悔しくないの、こんな酷いこと言われて」
綿貫和音は黙ったままだ。


「おい、和音が喋れないの黙ってろよ。誰にも喋るなよ、いいな」


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