あ、あ、あ愛してる
立っているのがやっとだと思った。

吃音しながら「すみません」を2回繰り返し、和音くんの体が崩れるように傾き沈み込んだ。


「和音!!」

和音くんの側で手話の通訳をしていた拓斗が、和音くんの体を支えた。

ドラムの奏汰も和音くんに駆け寄り、スタンドマイクを掴み叫んだ。


「和音が1人、『喋らない綿貫和音』を演じてた訳じゃない。和音の吃音がLIBERTEのイメージダウンになるから、『お前は歌以外喋るな』と和音に一切喋らせなかった。和音が1番辛い思いをしていた。悪かった、ホントごめん」

客席のざわめきが啜り泣きに変わっていた。


「和音ーっ」

悲鳴のような和音くんコールが、客席から幾つも聞こえた。

和音くんが荒く息をついている、過呼吸を起こしているみたいに。

拓斗が和音くんに「大丈夫か」と訊ねながら、和音くんの背中を擦する。
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