あ、あ、あ愛してる
あたしは涙で滲む和音くんの姿に、何度も目を擦った。

和音くんは拓斗に支えられ立ち上がると、ベースギターを手に取り奏でた。

拓斗と奏汰は頷き、定位置に着く。


和音くんが曲を奏で歌い始める。

♪月がきれいだと 伝えるだけなのに

言葉が喉につかえて出てこない

話すのは何より苦手

モゴモゴと口ごもる

漱石はI love youを

愛してると訳すのは無粋だと言ったけれど

月がきれいだで思いが伝わるのか?

君を抱き寄せ暫し考える

七夕の夜

アルタイルとベガは天の川隔て見つめあってる

君の温もりを感じて 言葉よりも大切な思いは

軽々しく口にできない

短冊にそっと「君が好きだ」と書いてみた

君は俺の側にいるから♪


和音くんの優しい歌声が響いた。

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