あ、あ、あ愛してる

部長が訳した手話に、元のピアノ伴奏者尾崎は「何で私に訊くの」と言いたげな顔で俺を睨む。

『伴奏してると和音とか呼吸の乱れや粗が結構はっきり判るよな。尾崎さん、言わなかっただろ。って、言えなかったよな。部長も副部長も音楽科だもんな』

部長と仁科の視線が痛い。

『今更だと思うけど、パート練習しっかりやって、改めて合わせてみたらどう？ ただ合わせても効果がない。ソプラノから順番に』

俺は部長の訳が終わらないうちに、ピアノに指を構える。

花音が尾崎の手を引き慌ててピアノの前に並び、他のソプラノメンバーも、それに続いた。

顧問が大会前なのに何故、部活に顔を出さないのかと声を大にし、問いたい気持ちでいっぱいだった。

俺はソプラノパートの半音下がる部分やリズムの乱れる部分、言葉のハッキリしない部分を中心にピアノを弾いた。