あ、あ、あ愛してる
「雑誌や新聞、見たか? ブログのアクセス数やコメントもパンクしそうだし、電話も……今日予定していた打合せは真相会見に変更になった」

拓斗は鬱陶しいと舌打ちをし、俺にヘルメットを渡した。


「和音、何を聞かれても手話は俺が訳してやるから案ずるな」


「わ、わかった……ああありがとう」

ヘルメットを被りバイクの後部シートにまたがり、拓斗の腰に手を回ししがみつく。

風を切り走るバイク、炎天下の暑さが嘘のようだ。

心地よい風が体を包む。


「コーラス部の練習…… ……だった?」

風の音と騒音で拓斗の言葉がよく聞こえない。


「コンクールは勝てそうか」

拓斗が音量を上げる。


「いー今のまま、まではむむ無理。だだけどもーくひ標はぜぜ全国たーた大会」

拓斗の笑い声が風音に混じり聞こえた。
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