あ、あ、あ愛してる
見下ろされ、ドスの聞いた声で言われる。


「い、言わないわよ。信じらんない。自分たちの仲間を歌を作って歌うしかできないみたいに」


「実際そーだろ。なあ、和音」


「あなた、反論しなさいよ。何で黙ってるのよ」


「着ぐるみに言われたくないんだけど。それにファンなんて、こいつの歌声とルックスしか興味ないんだよ」


「酷すぎる。和音くんが可哀想。和音くんがいなきゃバンドできないくせに。ファンにだって失礼だわ」


「和音。行くぞ、準備しろ」

あたしの雄叫びを無視して、歌うしか能がないと言った男性が綿貫和音の手を引っ張る。

綿貫和音は引っ張られた手を振り払い、手で会話する。

「早く来いよ」

無愛想に言い、ベースギターを手にとり背を向ける。

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