真夜中のアリス

そんな黒い感情ばかりで何も見えなくなっていた、そんな時に足が絡まり思い切り前のめりになり倒れこんでしまう。辺りは芝生のような感触、あまり痛さは湧き上がってはこなかったがそのまま這い上がれそうにない。

「…」

倦怠感で全身が包まれる。流れていた涙も止まったみたい、どうやら涙は尽き果てたようだ。頭が靄がかかったようにあの声もなにも聞こえてこない。
そして襲い来る睡魔とそれを抗うこともしない心。

ああ、最初からこうしてればよかったのに、と固く瞳を閉じて何時ものように世界を遮断する。

どうしてまた開こうとしたんだろう。大切な筈の親友にさえも見せなかった、心を。しかもそれを正体不明なヘンテコなウサギに。
こうやって見ない振りをしていればこんなにも痛くも怖くもなかったのに。
< 106 / 349 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop