真夜中のアリス
その途中、暗闇の中にひっそりと静寂を守るように鎮座しているそれに視線が重なる。
「…あれは…」
暗がりの壁の一角。何も存在しない場所にぽつんと物悲しく置かれている物体。… 見覚えがある。そして忘れる筈がない。
「あ、あの時と同じダストシュート…!」
駆け寄ってよく目を凝らして見てみる。寸分の違いさえ見当たらない、逆さまに転落したあのダストシュートがここにも存在していた。
「…そういえば…、ウサギ、口が酸っぱくなるぐらい“あのルート"“あのルート”って喧しかったっけな…」
色んなことがありすぎて、そんな話をしていたのが遠い過去の記憶のように思える。実際は1日さえ経っていないのだろうけれど。