真夜中のアリス

“瑠衣ちゃんは…、ずっと自分を責め続けているんだよ”

脳内に響く低音の声。持ち主は勿論彼だ。
彼も僕の中から、瞳を通してこの夢の映像を眼に移し続けていたのだろう。
僕らはあの日からずっと同じ役割、アリスの“時計兎”となって彼女を迎えに行く日をずっと待ち侘びていた。

「え…?」

“あの出来事を…、転落の最中で少し思い出したようだったけど。
これまでは、ずっと無意識に自分を責めて責めて…泣き眠っていたんだ…”

「そんな…。だってあれは…っ!」


“そう。あれは俺にとってはただの不運。けれど彼女はそうと捉えていない。
俺と別離してしまったあの出来事は全て自分の引き起こしてしまった事だと心の奥底で今もずっと思い続けているんだ”
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