真夜中のアリス
「…女王さまは、だからこそ僕らを外にお供することを許さず、記憶の回帰として僕を花園へと命じたのかもしれない」
僕自らが抗う事が出来ず、みすみすと闇夜に取り込まれてしまうかもしれなかったから。
「ねぇ。僕はそうとは思わないよ。
少し話をしよう。きっとアリスは心配しなくても女王さまが必ず連れてきてくれるし、アリスだって君の事が今でも大好きなんだから」
アリスと時計兎。本来は追って追われる 追いかけっこをするだけの関係。
そこに愛だの慈しみだなんて芽生える事もなければ、芽生えさせてはならなかった。
史実はそう記してない。けれど、僕らは違った。
「史実を覆しても僕も君だって、アリスが大切で愛しているんだ
きっと今、アリス自身も自らの闇を切り裂いて抜け出そうとしている、だから僕らも…」
“…”
ふわりと薫る薔薇と甘い香り。闇の隙間に射す光を垣間見た気がした。