真夜中のアリス
「芋虫さんに悪いことしちゃったなぁ。挨拶出来なかったし。それに…朱鳥くん、こっち向いてくれなかったな…。やっぱりずっと怒ってるのかな…」
暖かい真新しい記憶と黒を思い出すと、胸が痛むと同時に苦しくなる。そして沸き上り溢れだそうとする涙。
ぴょこぴょこ。
そんな時に聞こえた、可愛らしい擬音。顔をあげると、これもまた可愛らしい白いウサギが此方を見て首を傾げている。
「く、黒の次は白…?」
ウサギは、そのままお揶揄うかのような跳ね方でぴょんぴょんと前方へ向かっていく。
まるで、「こんなとこにいないでこっちに来てみたら?」なぁんて言ってるみたいに。
「…何よあれ…。あのウサギもそうだし、この辺のウサギは人を揶揄うのが趣味なのかな…。」
はぁとひとつ、ため息を吐いてウサギの後を追いかける。自分で言うのもなんだけど、ここではあたしは。
「アリスだもんなー…、とりあえず」