真夜中のアリス
「ちょっと待ってよー!行かないでってば!」
あたしの呼びかけなんてどこ行く風。ぴょんぴょん跳ねるウサギを追って小走りしていると、何やら景色とは不似合いな、灰色かかった色味のない少し崩れていそうな大きな家が立っている。何の迷いもなく、そこにウサギは飛び込む。何故かドアは開かれている。
「…もしかしなくても、あたしも入んなきゃなんないオチ…?」
恐る恐る開かれたドアに手を取り、家に入ってみる。完全に入ったと見なされたのかギィと音を立てて、がたぁんと大きく響き扉は閉まる。
中は真っ暗暗闇。陽が射さないのは窓は重いカーテンに閉めきられているからだ。それを勢いよく開けると、入り込む光。そして宙に舞い出す埃。