真夜中のアリス
Pond of a tear
森の奥深く。
流れる軽快なピアノの旋律のジャズは、ここの蓄音機から発生されているらしい。
そんな軽快な音楽を聞きながら、1人の男は忙しなく動かしていた手を止め頭を傾げる。
男のいる、広い花園の中心に造られたガーデンには何人来ても座れるような大きさのテーブルの上にはクリームたっぷりなケーキやクッキー。フィナンシェ・マカロンといった焼き菓子に何故か数枚のお煎餅。
ポットからは甘い香りの紅茶がカップに注がれるのを今か今かと待ちかねている。
「おやおや?あっちの方角は今日は雨なのだろうか?」
見つめる方角に咲いている薔薇を一つ紡いで、特等席と思われる場所にそっと飾る。
まるで、これからやってくる誰かを歓迎するように。
「まあそんな日もあるか」
早々に結論付けて、止めていた手を動かし始める。カチャカチャと心地好い食器の音を奏でながら。