真夜中のアリス
珍しい黒い毛並みをしたウサギ。その毛並みから見え隠れする首元にかかる何かが光に反射している。
「…ネックレス…?違う、あれは…懐中時計だわ」
そっとウサギに触れようと立ち上がり掌を伸ばすが刹那、ウサギはあたしの横を一跳ねをしてそれを遮る。そして、そのままぴょんぴょんと跳ねて夜の闇に溶ける。
「…な、何よあれ…。ちょっと、待ちなさいよ!」
気がつくとあたしは、ウサギを追いかけるべく走り始めていた。
横切った時に聞こえた、あの囁きに似た声。
あれが心を揺さぶるように気になってしまったからだ。
“ふふ。やっと会えたね、僕のアリス!
早くこっちにおいでよ!君の望む世界はここにあるんだよっ!!”