真夜中のアリス
尤も芋虫さんが人と言っていいのか、ちょっと解答しにくいが。
とぼとぼと歩きながらふと過るのは、やっぱりあの人の笑顔。穏やかで暖かくて、優しい眼差しであたしに笑いかけてくれた。
それなのに。
「…あたし、なんであんな嘘…ついたんだろう」
双子たちがいた森で、思い出した後悔の念。
なんでそんな事を吐くような状況になったかは思い出せはしないけれど、それは抗えない事実で激しく胸を締め付ける。
「ここで、朱鳥くんに会えたら謝りたいし話しがしたいな…」
希望を吐いてみる。けれどすぐに自嘲気味に吹き出してしまう。だってそんな事があり得るわけがない。