真夜中のアリス

「ちょ…っ!待ちなさいよそこのウサギ!ぴょんぴょん跳ねるな!」

追えば追うほど遠くへ逃げてしまうそれを、何故か気になって本来の目的を忘れ夢中になって追いかけ走る。気になるのはそれだけはない。風のように囁いて消えた不可思議な言葉の羅列。

「アリスって、一体何の事?…誰のことを言っているの?」

ウサギの後を追い、降り続く雨の中必死に走るもさすがに追い付けず一瞬にして見失ってしまった。街灯もない雨と真夜中の闇、毛並みの黒が同化したせいでもあるだろう。ウサギの位置を肉眼で把握する事は不可能に近かった。

「はあー、はあー…。何だったのよあれ…。次に見付けたらにして捕獲して飼ってやろうか…」
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