真夜中のアリス

身体を屈め息を整えながら前方を睨みながら吐き捨てる。その言葉の返答は有り得ないのだけれども。

…シーン。吐息だけが谺する夜特有の物静かさ、深々と雨は降り続けて傘を持たないあたしを容赦なく濡らしていく。
忘れようとした“寂しさ”が胸にこみあげてくる。心に比例して、身体にもある感覚が甦る。
とうに消え失せたはずの“寒さ”。走ったせいで出てきた汗もゆっくり冷えてきて、予め濡れていた服も冷たさを呼び火照った身体は肌寒さを覚える。
ぶるっと身体は寒さで震え、鳥肌さえも現れてしまう始末。

「…馬鹿みたい。あたし、なにやってんだろ…」

ぽつり、雨と共に流れ落ちた言葉。自分が吐いたものだと気付くのに少々時間を要いた。
心がやけに寂しく虚しい。
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