真夜中のアリス
ふわりと薫る、彼の香り。駆け抜けるように、脳内へ知らしめ眩暈を齎す。
「(…もうそうゆうのやめてほしいなぁ…。ここは…朱鳥くんを彷彿させる物が多すぎる。結構辛いなこれ…)」
涙が目に浮かんだけれど、それに気付かない振りをしてレジーナから差し出された衣服に腕を通す。用意されていたのは、現在レジーナが身に纏っている黒のゴシック調に酷似している衣服だった。
薔薇の刺繍が施されていてフリルたっぷりに入り込まれている黒のワンピースに高くてゴツめのヒールの赤いパンプス。
黒い丸首のブラウスの袖は姫袖と呼ばれるもの。動かす度ひらひらとレースが舞う。
そんな姿を鏡を通して見てわなわなと身体は震えだし、愕然とする。