真夜中のアリス
「…ほんとに、本当は…。
朱鳥くんはどこ探してももういないんだよね…」
まだどこかで信じていたかったけれど、それはただの執着としかいえないものになりそうだ。
「けれど、あの人は、彼はあなたの事だけをずっと心配していますよ。それこそ魂の安らぎなど存在しないように、あなたのことばかりを…」
「そんなの…、絶対ありえないよ。
さっき全部思い出したの。お茶を溢してその香りが鼻腔をくすぐった瞬間に」
大切な彼との思い出が教えてくれた、変えがたい現実の真実。拳を作りぎゅっと力をこめる。
「….だってね、あたしは朱鳥くんに怨まれても憎まれても仕方がない事をした。
それなのに…あたしのせいなのにいつまでも固執して、あの人をいつまでも苦しめてる!」