真夜中のアリス
慌てて振り返るもそこには何もない。変わらない雨と氾濫する川の激流の音、そしてそれを増長する拡がる闇の光景。単なる、気のせいなのだろうか…。
「…何だったの今の….。あたしの聞き間違えかな…」
一言呟いて、もう一度歩みだす。するとまた、響き渡る凛とした声。
どこに帰るの?"
今度ははっきりと聞こえる。凛と張ったソプラノのような高い声。でもどこから聞こえてきているのかはわからない。
「…どこって決まってるじゃない…」
"独りぼっちで可哀想なアリス。"
あたしの言葉を遮りそれは発し続ける。
心の中を見透かされているようで、嫌悪感が身体中に駆け巡る。
"君に帰る場所なんて…あるの?"