真夜中のアリス
そんな声がすぐ側に聞こえてきた気がした。
声の主の居所はすぐにわかった。だってあたしの真正面にいた。壇上の上、黒いスーツと少し長めの黒髪に穏やかな陽だまりのような笑顔と優しそうな眼差し。
威風堂々と、新入生代表としての挨拶を述べていた彼。
さっきの言葉はきっと祝辞の中の聞き間違いであろうと、軽く落胆。そのまま顔を上げる。すると、目が合ったような気がした。慌てて横を向くと彼はまた小さく笑って目を細めていた。そして挨拶の最中、誰にも気付かれないように口パクであたしに語りかけてくれた。
「大丈夫だよ」
人生初の一目惚れ、違う意味であたしは心臓を高鳴らせることになったのだった。