真夜中のアリス
泣きたくなるほど、惨め過ぎる片思いだった。
そんなある秋の日だった。
「いきなり突風が吹き荒れ始めてね、普段なら被らないのにさ、何故かその日に限ってニット帽なんて被ってたの」
同じ学科、同じクラスでいつの間にか深い親交を築き上げられたつかさと買い物に出掛けた際、強く勧められて断りきれず半ば自棄で買ったようなもののニット帽。
袋から出さずずっと見向きもしなかったのに、何故かその日はそれを被り家を出たのだった。
大学近くの銀杏並木、風が吹くたびに舞い踊らるように高く上がる金色。穏やかな気候なのに、似つかわしくない強風に厭厭前に進む。と同時に更に強い風があたしを囲い込む。更に高く舞い上がる金色と、靡く髪。そしてニット帽。