真夜中のアリス
「じゃあ、じゃあアリスは…今どこにいるの?」
俺の代わりに彼は慟哭を上げ、揺りかごから飛び降りて花園を駆け抜ける。
どんなに走り続けても目と鼻の先にある扉へは一向に辿り着く事は出来ない。
『まあ待ちなよ、君には真実の扉を開ける事は出来ないんだから。
君は第一に鍵を持っていないだろう?』
麗らかなる声は、歌うように語りかけるように優しく頭の中に鳴り響く。
まるで、“俺達”にまで言い聞かせるかのように。
途端に、ゼンマイが切れた玩具のように動きを止めて立ち尽くす彼。不安や焦りは募る。
“ねえ、ねえってば!
どうして進んでくれはしないの!?
早く、早く彼女の元に行かなきゃなのに…!”