真夜中のアリス
“…ねえウサギくん。今の声をって、もしかして…”
「…今はまだ知らなくていいと思うよ。
知ってしまえば、全て終わってしまう」
伏せ目がちに彼は応える。
彼は俺より先に解っていたようだ。
そうだ、これはただの夢。
断続的に続いた長い、アリスが見る夢のなれ果て。
あの声も然り、アリスが無意識に造り出した心の奥底の願い。
「終わりがない夢なんてない。
明けない夜なんてなければ、癒えない傷なんてない。
アリスだって何時かは傷を乗り越える。
その“何時かは”今なんだよ」
その鍵穴に、ぴったりあった鍵が差し込まれるのはもうまもなくのようだ。
その時俺は、彼女の涙を拭って笑って背を押せるのだろうか。