真夜中のアリス
「…涙を拭って?目を腫らしたまま、彼にお会いは出来ないでしょう?」
言葉を失い、ただ涙を流し続けるだけのあたしにレジーナは白いハンカチをそっと手渡してくれる。
「……ありがと」
「例えここは夢の世界でも、ここにいる間はあなたは“アリス”なんですよ。あなたが知っているアリスの姿は?」
「…好奇心旺盛で、怖いもの知らず?
あと…悲しい時は泣いて、楽しい時は絶えず笑う……とか?」
突然投げられた疑問に対して、首を傾げながら解答すると綺麗な笑顔で頷くレジーナ。
ふわりとまた薔薇の香りが駆け抜ける。
「解ってらっしゃるじゃないですか。
だからこそ、笑顔でいてください。
アリスが笑ってくれないと、わたしたちだってどうすればいいかわからないんですから」