真夜中のアリス
Alice and rabbit
薔薇の香りが駆け抜ける、穏やかな時間。あたしの息遣いだけがやけに煩く聞こえる。
「アリス……!!」
正面から聞こえてくる、あたしを呼ぶ声。あの子もあたしと同じように、息を切らしながら駆けてきてくれているようだ。そうだ、あの時からずっとあたしは「アリス」で、そしてあの子はずっと「時計兎」。
そう笑いあって、約束をしてたのに。どうしてあたしはそれさえも忘れていたんだろう。
「……!おいで、あーちゃん!!」
手を大きく広げ、ウサギ…あーちゃんを抱きとめようと立ち止まる。あーちゃんは勢いあまってあたしに飛び込むように懐にすっぽりと収まる。昔とちがって、かなり大きくなったあーちゃんを離さぬまいとぎゅっと強く抱きしめた。