真夜中のアリス

そんな声が麗らかな花の香りと共にやってきて通り過ぎるようにふわりと消えていく。そして腕の中の暖かみや重みが消えて空となってしまう。これでもう、本当にお別れなのだ。
止まらない涙を拭い、声をあげる。あの子が彼方でもあたしのことを心配なんてせずに幸せに過ごせることを祈りながら。

「ありがとう、あーちゃん….。ううん、『あした』。貴方も幸せにね….!」



涙を拭い、スカートの裾をあげそして靴を脱ぎ捨て目指すは最奥にある揺籠。一心不乱に駆け出し今か今かとその時を待つ。
あーちゃんは来てくれた。最後の力を振り絞って。だからこそ、今度はあたしが迎えに行かなくちゃ行けない、あたしのもう1人の時計兎さんを。
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